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2024.10.30

【論文】Analytical Chemistryに掲載

尿中エクソソームmicroRNAを用いた複数がんの検知に関する研究です。Supplementary journal coverに選ばれています。

論文概略
健康な人とがん患者では、エクソソームなどの細胞外小胞に含まれるいくつかのmicroRNAが異なっており、これらが“がんマーカー”として使える可能性があります。エクソソームは、全ての細胞が放出する微粒子(直径40-200 nm程度)であり、細胞と細胞がコミュニケーションする時の情報伝達物質として体内で機能しています。エクソソームが血液中で拡散移動する時間と、血液循環にかかる時間を考慮すると、1回の血液循環の間で、血液中の全てのエクソソームが細胞間のコミュニケーションに使われることはないと想像され、このコミュニケーションに使われなかったエクソソームは腎臓で非選択的に濾過されることが示唆されています。今回の研究では、“血液中のエクソソーム全てはコミュニケーションとして用いられずに一部が尿中へ排出される”という仮説を立て、尿中のエクソソームのmicroRNA解析を実施しました。本研究では、酸化亜鉛ナノワイヤを用い、がん患者と健常者の尿中のエクソソームを効率的に集め、その後にエクソソームからmicroRNAを取り出すことを実施しました。取り出した尿中エクソソームのmicroRNAを、がんマーカーとなるようなmicroRNAの組み合わせ(microRNAアンサンブル)を機械学習解析にて構築したところ、がん患者と非がん患者ではmicroRNAアンサンブルが異なることを発見しました(感度98.2 %、特異度96.5 %)。さらに、早期がん(ステージI)患者の識別も可能でした(AUROC 0.987)。

論文情報
Early cancer detection via multi-microRNA profiling of urinary exosomes captured by nanowires
T. Yasui*, A. Natsume*, T. Yanagida*, K. Nagashima, T. Washio, Y. Ichikawa, K. Chattrairat, T. Naganawa, M. Iida, Y. Kitano, K. Aoki, M. Mizunuma, T. Shimada, K. Takayama, T. Ochiya, T. Kawai and Y. Baba*
Analytical Chemistry, 96, 17145 (2024), 10.1021/acs.analchem.4c02488

Analytical Chemistryとは
Analytical Chemistryは、アメリカ化学会の公式ジャーナルであり、分析化学分野で最も引用されているジャーナルです。分析化学における新しい発見や独創的な知見を広めることを目的とした査読付きの研究ジャーナルで、理論研究から実験結果を報告する研究まで幅広く掲載しています。このジャーナルに掲載される論文は、新しいまたは改良された化学測定法を紹介するものや、既存の手法について独自の視点でその原理と性能を論じるものが対象です。既存の分析手法に関する論文であっても、一般的には大幅な改良や独自の応用を示す内容であることが求められます。Analytical Chemistry に含まれるサブ分野は、サンプリングやデータ解析などの分析操作、バイオアナリティカル化学、バイオエンジニアリング、化学分析、環境科学、法科学、材料科学、医学などが含まれ、化学測定の理解を深めることが目指されています。