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Research

Making the impossible possible

当研究室は、ナノデバイス技術・量子技術を駆使することで、生命科学分野で不可能だと思われていた概念を現実のものとする技術を開発し、新しい研究領域の創出や産業の変革を目指しています。化学、工学、ナノテクノロジー、マイクロ流体化学、量子化学、インフォマティクスなど様々な分野の分野融合を通して、生命科学・医療に飛躍的な発展をもたらす研究活動を実施しています。原理検証となる基礎研究だけでなく、医工連携等による学際的研究、さらにはベンチャー創業・企業共同研究による社会実装と広く展開しています。安井研究室は、生命科学や理学・工学、医学・創薬・情報学など、いろいろな分野を学び、分野に捉われずに新しいことを創る研究に興味があるメンバーの集まりです。

01 Sampling

血液や尿などの体液中の細胞外小胞は、全身の様々な細胞から放出されている細胞外小胞が含まれています。ある組織が放出している細胞外小胞のみを回収するためには、新しいデバイスが必要です。当研究室ではナノデバイスを使って組織表面から時空間情報を伴って細胞外小胞を回収する手法の開発を行なっています。

Nat. Commun., 14, 6915 (2023), 10.1038/s41467-023-42593-9

02 Separation

体液中の細胞外小胞や生命分子を分離することは、全ての分析操作の始まりとなります。当研究室では体液中の細胞外小胞を網羅的に捕捉するナノデバイスの開発をしています。ナノスケールの棒であるナノワイヤを用いて、尿中の細胞外小胞体を捕捉する新しい技術を構築し、そのナノワイヤが尿中細胞外小胞体を99%以上捕捉する新しい素材であることを発見しました。

Sci. Adv., 3, e1701133 (2017), 10.1126/sciadv.1701133.

ナノワイヤをポリケトン鎖修飾することで細胞外小胞の結合性を高め、より純度の高い細胞外小胞を捕捉することを可能にしました。卵巣がんにおける細胞外小胞を対象として、卵巣がんの診断や治療経過予測に関する細胞外小胞を捕捉するナノデバイスとして研究を展開しています。

Sci. Adv., 9, eade6958 (2023), 10.1126/sciadv.ade6958.

ナノワイヤ表面とcell-free DNA(cfDNA)の水素結合に着目し、水素結合を介したcfDNAの「キャッチ」、競合的に結合可能な分子の導入によるcfDNAの「リリース」のメカニズムを解明し、尿中cfDNAのキャッチ&リリース技術を開発しています。尿中cfDNAのキャッチ&リリース技術を駆使し、尿中cfDNAからグリオーマにおける遺伝子変異であるIDH1変異の検出に成功しました。

Biosens. Bioelectron., 234, 115318 (2023), 10.1016/j.bios.2023.115318.

03 Detection

ウェルプレートの底面にナノワイヤを配置し、細胞外小胞捕捉と細胞外小胞膜タンパク質の検出を同時に行うオールインワンプラットフォームを開発しています。このプラットフォームにより、脳腫瘍患者や非がん患者の尿サンプル中細胞外小胞の特定の2種類の膜たんぱく質の発現量比を調べたところ、発現量比が異なることが明らかとなり、脳腫瘍診断の新しい指標として利用可能であることを発見しました。

ACS Nano, 17, 2235 (2023), 10.1021/acsnano.2c08526

ナノワイヤを約1億本密集させて微細流路内に作製したナノデバイスを利用して、尿中の細胞外小胞体をより効率よく集める装置を開発し、わずか1mLの尿から従来の方法に比べ大量のmicroRNAを抽出しています。この装置を用いることで、脳腫瘍が分泌する特徴的なmicroRNAを尿でも見つけられることが明らかとなり、尿中のmicroRNAを調べることで脳腫瘍の種類や大きさを問わず、99%の正確度(感度 100%、特異度 97%)で脳腫瘍を診断できることを世界で初めて発見しました。

ACS Appl. Mater. Interfaces, 13, 17316 (2021), 10.1021/acsami.1c01754