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VISION

Basic research

生命分子解析における学術的・社会的ニーズに正面から応えるべく、生命分子の新しい分離抽出法の開発を行なっています。近年着目しているのは細胞外小胞です。細胞外小胞は、その内部に生命の遺伝子発現を制御するmicroRNA等の核酸が存在しており、一連の生物学的な生命現象において様々な関与が報告されています。従来の細胞外小胞の分離としては、超遠心分離による密度分離、免疫反応による免疫分離、サイズ排除クロマトグラフィによるサイズ分離が中心に用いられてきました。しかし、従来技術による捕捉効率の低さにより、生成過程、機能発現過程、分解排泄過程について、本質的に理解が遅れています。従来技術の回収率の低さは相互作用力の弱さに起因しており、従来の回収技術による細胞外小胞の解析は、細胞外小胞の本質を捉えているとは言い難い状況でした。そこで、当研究室は、回収率向上に繋がる相互作用力を介した回収方法を提唱し、ナノ材料によって細胞外小胞を網羅的に捕捉する技術を開発しています。

Basic research

Applied Research

生命分子解析技術をリキッドバイオプシー(液体生検)として応用展開すべく、微細流路中にナノ材料を作製したデバイスを創出しています。リキッドバイオプシーと呼ばれる検査法は、⾎液や尿、唾液などの体液の採取・検査のみで腫瘍・疾病の検出や追跡ができると期待されている手法です。組織生検と比較し、極めて低侵襲に検体を採取して解析ができること、そのため長期フォローアップにかかせない繰り返し・頻回検査が容易に実施可能であることなど、その簡便性について大きな期待が寄せられています。当研究室は、ナノ材料を微細流路中に組み込み、臨床応用への橋渡しとなる簡易操作で動作するナノデバイスを作製しています。例えば、あるナノデバイスは、細胞外小胞を99%以上捕捉でき、尿1 mLから1300種類以上のmicroRNAを発見するなど、従来手法を凌駕することに成功しています。その当時、2000種以上の存在が確認されているヒトmicroRNAはその機能がヒト機能維持に大きく関与していることから、超遠心法で尿20 mLより発見された300種類程度という数字が尿中microRNA種類数として妥当な数字であると長い間考えられており、当研究室の1300種類以上という数字は革新的な種類数でした。さらに近年、ナノデバイスを用いた尿中細胞外小胞の網羅的捕捉技術とそれに伴うmicroRNAプロファイルの機械学習に基づいた解析により、がん診断率・感度・特異度において優れた予測結果が得られています。これは従来妥当と考えられてきた300種類という数字では達成できなかった尿診断による健康な社会を実現するナノデバイス技術の新展開であり、産業に変革をもたらす基盤技術となりつつあります。

Applied Research

Social Development

開発した技術を基盤とする大学発ベンチャーであるCraif株式会社を共同創業し、多くの病院と共同で疾病の早期診断技術の開発へと展開しています。Craif株式会社の創業は2018年です。Craif株式会社は、2019年に大学発ベンチャー表彰2019においてNEDO理事⻑賞の受賞、2020年に2020年度総務省「異能vation」にて「ジェネレーションアワード部門」分野賞受賞、2021年にはNatureのオンライン特集記事 “Advanced extraction of urinary microRNA for early cancer detection” の掲載など、国内外から高い評価を受けています。2022年2月1日より、“miSignal™(マイシグナル)”として尿中microRNAからがんの早期発見を行うサービス展開を提供開始し、47都道府県全ての医療機関で社会実装を行なっています。
https://craif.com
https://misignal.jp

Social Development