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2025.02.04

【論文】Chemical Communicationsに掲載

がん細胞由来の細胞外小胞を効果的に除去する細胞毒性が低いナノワイヤデバイス開発に関する研究です。Front coverに採択されました。

論文概略
細胞外小胞(EVs)は、がん細胞の増殖や転移に重要な役割を果たし、正常細胞に異常な成長を誘発することが知られています。本研究では、亜鉛酸化物(ZnO)ナノワイヤーと、それに酸化チタン(TiO2)や酸化ケイ素(SiO2)層を加えたコアシェル型ナノワイヤーを用いたEV除去デバイスを作製しました。これらのナノワイヤは、それぞれ異なる電荷表面を持ち、異なる種類のEVを効率的に除去することが確認されました。特にZnO/SiO2コアシェル型ナノワイヤは、EVsを除去しつつ、細胞毒性を引き起こさない特徴を示しました。がん細胞由来EVsを添加した培地での正常細胞の培養と、デバイスでがん細胞由来EVsを除去した培地での正常細胞の培養の比較によって、デバイスでがん細胞由来EVsを除去することで、正常細胞の異常な細胞増殖が抑制されることが示されました。この技術は、がん転移抑制や新たな治療法の開発につながる可能性を持つと考えています。

論文情報
Non-toxic core-shell nanowires for in vitro extracellular vesicle scavenging
Piyawan Paisrisarn, Kunanon Chattrairat*, Yuta Nakamura, Kazuki Nagashima, Takeshi Yanagida, Yoshinobu Baba* and Takao Yasui*
Chemical Communications, (2025), 10.1039/d4cc03767g

Chemical Communicationsとは
Chemical Communicationsは、化学分野に関連する重要かつ関心の高い、緊急性のある新しい研究を掲載するJournalです。化学分野全体に幅広い読者層を持っています。4ページ構成のCommunication記事では、研究の初期段階で得られた注目すべき結果が報告されています。対象分野は化学全般にわたり、化学と他分野(例えば、材料科学、ナノサイエンス、物理学、工学、生物学など)の境界に位置する研究で、特に化学的側面において革新性があるものも対象としています。主なトピックエリアとしては、分析化学、触媒、ケミカルバイオロジーおよび医薬化学、計算化学および機械学習、エネルギー、グリーンケミストリー、無機化学、材料化学、ナノサイエンス、有機化学、物理化学、高分子化学、超分子化学などです。