2025.01.13
【論文】Lab on a Chipに掲載
ナノワイヤに非メチル化DNAが選択的捕捉される性質を利用した、メチル化DNAの分離手法に関する研究です。Front coverに採択されました。
論文概略
DNAメチル化はがんの早期進行を示すバイオマーカーとして利用される重要なエピジェネティック修飾だと知られています。しかし、従来のDNAメチル化解析法は、手法が複雑で時間がかかり、DNAの分解を引き起こしやすいという課題があります。本研究では、化学的または生物学的修飾を行うことなく、酸化亜鉛(ZnO)ナノワイヤを用いて非メチル化DNAを選択的に捕捉し、メチル化DNAを濃縮する手法を報告しました。ZnOナノワイヤへのメチル化DNAの親和性と非メチル化DNAの親和性には差があることを発見し、「水素結合強度の違い」や「メチル化によるDNA鎖の挙動(自己凝集など)に及ぼす影響」が関連している可能性を見出しました。その結果、ZnOナノワイヤをもつマイクロ流体デバイスは、非メチル化DNAを効果的に収集し、低濃度のメチル化DNAを収集する際に有用であることが確認されました。このZnOナノワイヤ–マイクロ流体デバイスは、特定のメチル化DNAを直接分離することを可能にし、臨床的な疾患診断におけるDNAメチル化マッピングにつながる可能性があると考えています。
論文情報
Selective adsorption of unmethylated DNA on ZnO nanowires for separation of methylated DNA
Marina Musa, Zetao Zhu*, Hiromi Takahashi, Wataru Shinoda, Yoshinobu Baba and Takao Yasui*
Lab on a Chip, (2025), 10.1039/d4lc00893f
Lab on a Chipとは
Lab on a Chipは、小型化の分野における最先端の研究を発表するためのジャーナルです。小型化や自動化などは、生物学、医学、材料科学、分析化学、環境モニタリング、エネルギーなど多岐にわたる分野で、産業応用や臨床現場における操作性や利便性などに大きな影響を与えています。マイクロ流体/ナノ流体/小型化システムは、その性質上、学際的な分野にまたがっており、Lab on a Chipでは基礎研究から応用研究に至る研究を網羅するジャーナルとなっています。