2025.03.03
【書籍】Springer Nature Singapore 2025に掲載
ナノワイヤ技術を用いることで、細胞外小胞を従来法よりも迅速かつ高純度・高収率で分離・解析でき、がん診断をはじめとする臨床応用への可能性が広がっていることを示した内容です。
Book chapter概略
細胞外小胞は細胞間の情報伝達に関与し、がんなどの疾患診断のバイオマーカーとして期待されているが、その小さなサイズと多様性のため、高純度・高収率で分離することが課題となっています。従来の分離法には超遠心分離やサイズ排除クロマトグラフィーがあるが、時間がかかる上、収率や純度に限界があります。本章では、ナノワイヤ技術を用いた細胞外小胞の分離と解析に関する研究について解説をしています。ナノワイヤは高い表面積比とアスペクト比を持ち、マイクロ流体デバイスと統合することで、短時間かつ少量のサンプルから効率的に細胞外小胞を捕獲することが可能です。特に、酸化亜鉛ナノワイヤを用いたデバイスでは、尿中の細胞外小胞由来のmicroRNAを高感度に検出し、がんの診断に応用できる可能性を見出しています。さらに、ナノワイヤの表面を修飾することで特定の細胞外小胞のサブタイプを選択的に捕獲する技術も開発されています。細胞外小胞の解析には電子顕微鏡やナノ粒子トラッキング解析、フローサイトメトリーなどが用いられますが、ナノワイヤアッセイシステムを利用すると、細胞外小胞の捕獲と解析を同時に行うことが可能となります。今後、ナノワイヤ技術を活用した細胞外小胞の分離・解析法の標準化と臨床応用が進めば、より迅速で精度の高い診断技術の確立につながると期待されます。
書籍情報
Extracellular vesicle isolation and analysis using nanowires
K. Chattrairat and T. Yasui
in Extracellular Fine Particles, eds. Y. Baba, R. Hanayama, H. Akita and T. Yasui, Springer Nature Singapore, 199-224 (2025), 10.1007/978-981-97-7067-0_15
Extracellular Fine Particlesとは
Extracellular Fine Particlesは、名古屋大学の馬場先生・金沢大学の華山先生・東北大学の秋田先生・東京科学大学の安井がeditorsの以下の内容を含んでいるオープンアクセス書籍となります。出版社はSpringer Nature Singaporeとなります。
・Gives comprehensive summary of extracellular fine particles research
・Describes endogenous and exogenous particles in terms of extracellular fine particles
・Discusses both functions and analytical methods of the extracellular particles