2026.01.30
【論文】Biosensors and Bioelectronicsに掲載
助教・阿尻さんがまとめた研究論文です。セルロースナノファイバーシートを用いて、わずか10 µLの唾液からエクソソーム由来マイクロRNAを迅速かつ安定に回収・保存することで、疾患状態や生活要因に伴う変動を捉える日常的モニタリングを実現しました。
論文概略
唾液中に含まれるエクソソーム由来マイクロRNA(miRNA)は、がんや炎症性疾患をはじめとする多様な疾患状態を反映する有望なバイオマーカーとして注目されています。しかし、従来のエクソソーム回収およびmiRNA解析手法は、超遠心分離などの煩雑な操作や大量試料を必要とするため、日常的・連続的なモニタリングへの応用には大きな制約がありました。本研究では、セルロースナノファイバー(cellulose nanofiber: CNF)シートを用いた新しい唾液エクソソーム回収・保存プラットフォームを提案し、唾液中エクソソームmiRNAのルーチンモニタリングを可能にする手法を報告しています。CNFシートは高い比表面積とナノスケールの多孔構造を有しており、わずか10 µLの唾液を滴下するだけで、エクソソームを迅速かつ効率的に捕捉することができます。試料処理時間は1分未満であり、特別な装置を必要としません。さらに、本手法ではCNFシート上に捕捉されたエクソソームmiRNAが室温条件下でも安定に保持されることを示し、従来法と比較して高いmiRNA回収効率と優れた保存性を実現しました。超遠心分離法との比較検証においても、CNFシート法は少量試料で再現性の高いmiRNA解析が可能であることが確認されています。本研究では、健常者およびがん患者由来の唾液サンプルを用いたmiRNAプロファイリングを行い、疾患状態に関連したmiRNA発現パターンの差異を検出できることを実証しました。また、20日間にわたる連続的な唾液サンプリングにより、食事などの生活要因に応じたmiRNA発現変動を捉えられることを示し、本手法が個人レベルでの時系列バイオマーカー解析に適していることを明らかにしました。これらの結果から、CNFシートを用いた唾液エクソソームmiRNAモニタリング法は、非侵襲・迅速・簡便という特長を併せ持ち、在宅医療や予防医療における連続的な健康状態評価、ならびに次世代液体生検技術への展開が強く期待されます。
論文情報
Routine monitoring of microRNAs in salivary exosomes using a cellulose nanofiber sheet
T. Ajiri, M. Zhang, N. Mizukami, M. Iida, S. Kawaguchi, Y. Sekihara, K. Chattrairat, Z. Zhu, Y. Baba, H. Koga and T. Yasui*
Biosens. Bioelectron., 299, 118436 (2026).
https://doi.org/10.1016/j.bios.2026.118436
Biosensors and Bioelectronics
Biosensors & Bioelectronicsは、バイオセンサーとバイオエレクトロニクスの研究、設計、開発、応用に特化した主要な国際ジャーナルです。このジャーナルは、新規の診断および電子デバイスにおける生物学的材料の利用に関心を持つ専門家にサービスを提供する学際的なジャーナルです。

