2024.06.22
Journal of Extracellular Biologyに掲載
羊水中の細胞外小胞microRNAを用いた重症先天性横隔膜ヘルニアの予測に関する研究であり、名古屋大学の横井先生との共同研究論文です。
論文概略
先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は、先天的に横隔膜が欠損し、肺低形成や肺高血圧により出生後、呼吸障害を呈する疾患です。重症例では、生存率が10〜15%と報告されており、近年FETO(胎児鏡下気管閉塞術)という胎児治療により生存率が少し上昇傾向ではありますが、重症例の予測が十分ではない(現時点でFETOの適応ではない症例でも新生児死亡となる症例がある)という問題点があります。そこで、今回羊水から細胞外小胞を抽出し、細胞外小胞中のmicroRNAにより重症例(ECMOを行った、もしくは新生児死亡)の予測ができるか検討し、単一のmicroRNAでAUC0.93、2個の組み合わせでAUC0.95という高い予測精度で予測可能であることが明らかになりました。また、CDHラットモデルを用いて、CDH羊水中で発現が上昇していた細胞外小胞microRNAとCDHの肺で発現が上昇していたmicroRNAが共通していたことから、CDHの肺の状態が羊水中の細胞外小胞microRNAに反映していることを示しました。羊水中の細胞外小胞microRNAによるCDH重症例予測という観点では今回がはじめての報告である点や、ラットの羊水は微量で1仔1仔の羊水中の細胞外小胞を抽出することは通常困難で、今までに報告がありませんが、EVシートを用いて検討できた点に新規性があります。
論文情報
Amniotic fluid-derived small extracellular vesicles for predicting postnatal severe outcome of congenital diaphragmatic hernia
S. Matsuo, A. Yokoi*, K. Yoshida, M. Kitagawa, E. Asano-Inami, M. Miura, T. Yasui, S. Tano, T. Ushida, K. Imai, H. Kajiyama and T. Kotani*
Journal of Extracellular Biology, 3, e160 (2024), 10.1002/jex2.160.
Journal of Extracellular Biologyとは
Journal of Extracellular Biologyは、国際細胞外小胞学会の公式ジャーナルであり、細胞外小胞と細胞外粒子の両方に関する研究を掲載しています。生合成から、相互作用、細胞外マトリックスや他の細胞外高分子(RNA、リポタンパク質、タンパク質複合体を含むがこれらに限定されない)との相互作用、そしてそこから受容細胞や臓器への最終的な影響までをカバーしています。