2025.11.03
【総説】臨床化学に掲載
「臨床化学」 Vol.54 No.4の“特集:尿バイオマーカーの新展開”に総説を執筆しています。
総説概要
本総説では、尿を用いた非侵襲的バイオマーカー研究の展開を概説しました。尿は採取が容易で保存性に優れることから、古くから臨床検査に利用されてきています。近年は、細胞外小胞(extracellular vesicles; EVs)に含まれるmicroRNA(miRNA)が疾患特異的情報を反映することが明らかとなり、尿中miRNA解析が注目を集めています。我々の研究室が取り組んでいる、酸化亜鉛ナノワイヤやセルロースナノファイバーを用いたEV捕集技術により、従来よりも多様なmiRNA種の網羅的解析が可能となった内容を紹介しました。さらに、機械学習を応用した尿EV miRNAアンサンブル解析は、膵がんなどの早期診断において高精度を示していることも紹介しています。共同創業したCraif社による大規模臨床研究では、非侵襲的尿検査によるがん検出が実現し、社会実装に向けた道筋についても触れています。今後は標準化や再現性検証を進めつつ、AIやデジタルヘルスと連携した新たな臨床化学的診断基盤の確立が期待されることにも言及しました。
書籍情報
尿中microRNA解析:臨床化学における非侵襲バイオマーカー
安井隆雄
臨床化学, 54, 201-205 (2025)
臨床化学
一般社団法人 日本臨床化学会が発行する学会誌です。
以下、HPより抜粋させていただきました(https://jscc-jp.gr.jp/?page_id=39)。
臨床化学とは、“臨床”という実践に立脚した学問領域です。それは、日常の臨床の場において、分析技術を土台に据えた化学検査を医療に提供する実務サービスとともに、病因・病態の解明や治療・予防に寄与することをめざしています。すなわち、臨床化学は、学術的な側面から実践的な側面、分析化学から臨床医学までを広く包括し、これを支える多くの学問領域と接しています。したがってこの分野には、大学・研究機関に限らず、病院検査室などの研究検査部門、臨床系各科、産業系研究機関など多岐にわたる研究者、実務家の方々が関わっています。
